境界とは?

境界には筆界と所有権界の2種類があるのをご存じでしょうか。

境界の問題を考える上で、これらを区別することはとても大切なことです。筆界とは、登記簿ごとに定まっている土地の地番と地番との境界で、所有者であっても変更することのできないものです。所有権界とは、土地所有権の及ぶ範囲の縁(へり)で、所有者間の合意で決めることができるものです。具体的には次のとおりです。

Aさんの7番の土地とBさんの8番の土地との筆界をイとロを結んだ線とします。通常は、所有権界も同じくイとロを結んだ線ということになります。
AさんがBさんからイロハニで囲んだ部分の土地を買いました。
この場合、所有権界はハニを結んだ線となりますが、筆界はイロを結んだ線のままで動くことはありません。このことは、取得の原因が上のような売買のときだけでなく、Aさんがイロハニで囲んだ部分の土地を時効により取得した場合でも同様です。
なお、上の具体例を登記に反映させるには、8番の土地のイロハニで囲んだ部分の分筆登記、その後に所権権移転登記の手続きをすることになります。

不動産登記とは?

物理的現況と権利関係を登録して公示

不動産登記とは、土地と建物についてその物理的現況と権利関係を、法務局という国家機関が管理する登記記録(登記簿)に登録して公示することによって、不動産取引の安全と円滑を図るものです。
物理的現況に関する登記を表示に関する登記、権利関係に関する登記を権利に関する登記といいます。

たとえば1区画の土地があったとします。そして、Aさんはこの土地が必要なので、誰のものかを調べて、譲ってもらいたいと思ったとします。そこで、いろいろな人に聞いて回って、誰が所有者なのかを尋ねたところ、3人が 「その土地は私のものです」 と申し出てきました。
その人たちは皆、古い契約書や先祖の名前の入った絵図面や購入したときの代金の領収書など、もっともら しい書類を持っていて、それぞれが自分の土地だと思っているようです。
これでは、誰が所有者か判りません。 Aさんは、誰からも安心して土地を買えません‥‥。このような不都合や混乱を防ぐために、国がもっとも信頼できる台帳をつくり、所有者が誰である かなどの不動産の情報を登録し、誰でも見られるようにしました。 (現在、台帳は多くの地域でコンピュータ化されています)
このような登録のことを「登記」と言います。 不動産の情報を登録するので、「不動産登記」と言います。

土地や建物の所有者のことを登記する前に、まず何処にあるどんな土地や建物かを、明らかにする必要があります。1つの土地、1つの建物ごとに台帳を作らなければ、それらを特定し、番号をつけて整理したり情報を記録したりすることができません。ですから、土地があったり建物ができたりしたときに、所在や用途、面積などを正確に届け出て、土地・建物ごとの登記記録(登記簿)を作ります。(表示に関する登記)

その上で、所有者に関することや、不動産に関するさまざまな権利の情報を正確に届け出て、土地や建物に誰がどのような権利をもっているかを登記するのです。(権利に関する登記)

不動産登記が役立つことは?

誰かから不動産を購入したときや、お金を貸した相手の土地や建物を貸金の担保にしたとき、これらの権利について、法務局に登記を申請することができます。
もし、これらの権利を登記しないと、第三者に主張することができません。 たとえば、AさんがBさんから土地を購入し、その代金を支払ったとしても、その登記をしない限り、Aさんは 「この土地は私のものだ」と第三者に主張することができません。
そればかりか、Bさんが、Aさんに売った土地を、事情を知らないCさんにも売り、Cさんが先に登記をした場合、CさんはAさんに対して「この土地は私のものだ」 と主張できることとなり、結局Aさんはこの土地を自分のものにできなくなるのです。
このようなトラブルを避けるため、不動産に関する権利の変動があれば、登記をすべきなのです。

境界紛争の予防策

土地の境界は、明治初期の地租改正事業がはじまりです。

地租改正事業は主眼が地租の徴収にあり、境界はその過程で結果として定められたという面があるため、その成立当初からあいまいさがつきまとっています。 地租が多く徴収されない「山林」や「原野」は、その傾向がより強かったようです。

このようなあいまいさが特質の境界が、紛争やトラブルの火種になることは当然ともいえます。境界紛争の予防は、境界のあいまいさを取り除くということにつきるのです。

ここが境界だと親から聞いているとか、売主からそのように説明をうけた、などと合理的な根拠がなく思い込み、隣人との認識の違いからトラブルになることがあります。
こようなトラブルをなくすには、境界のあいまいさを払拭するため、隣接する所有者同士が立ち会って確認したうえで文書に残し、客観的で明確な境界標を設置するのです。
これこそが、後世に紛争を残さない予防策なのです。

境界標設置

境界が不明確ということは、その土地を現地において特定できないということです。境界に関する問題のほとんどが、境界標が現地に無いために起っています。
境界標が無くて自分の土地を確定することができなかったり、以前立会をして設置した境界標が永久的なものではなかったため無くなってしまい、その再現に多くの労力を要したという事例は数多くあります。
境界紛争をなくすためには、永久的な境界標を設置することがとても大切なことです。

土地の境界は、国などの行政が管理しているのではありません。
法務局に登記されているということは、その土地の所有権が保護されているということは言えますが、法務局が土地の境界まで管理しているということではないのです。
土地の境界は、土地所有者自身が管理するものなのです。土地はいずれは相続されますが、代替わりをしてしまうとそれまでのいきさつが分からず、境界を確認することがいっそう難しくなってしまうものです。
お互いが安心し納得するために、お隣同士が協力し合って永久的な境界標を設置し、最新の測量技術で将来に残る文書を作成しておくことで、残した財産の価値が増加すことにもなるのです。

不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査及び測量

土地家屋調査士は、法務省管轄の国家資格で、不動産登記のうち表示に関する登記について必要な土地や家屋に関する調査、測量または登記の申請手続きを行います。
表示に関する登記とは、法務局にある登記記録(登記簿)の、表題部に関する登記です。表題部には、土地については、所在、地番、地目、地積が記載されており、建物については、所在、家屋番号、種類、構造、床面積が記載されています。表題部の記載は、不動産の物理的な現況を登記簿に反映させたものと言えます。
これらの業務を、土地家屋調査士は公正・中立の立場で行います。このことは、土地の境界確認における土地家屋調査士のスタンスとして是非ともご理解頂きたいと思います。

違いがわかりにくい資格

土地家屋調査士と違いがわかりにくそうな資格に、次のようなものがあります。

司法書士は、法務省管轄の国家資格で、不動産登記のうち権利に関する登記を行います。その他に商業登記、供託手続きや裁判所、検察庁に提出する書類の作成を行ったりもします。

測量士は、国土交通省管轄の国家資格で、国土地理院が実施する「基本測量」、国や公共団体が実施する「公共測量」に従事する技術者です。

不動産鑑定士は、国土交通省管轄の国家資格で、不動産の価格を鑑定する専門家です。

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